2026年5月16日

「まだ小さいから、歯並びのことは永久歯が生えてから考えればいいかな」
そう思っているご家庭、実はとても多いと思います。
歯並びの矯正というと、どうしても小学生以降のイメージがあるので、0〜6歳の乳歯の時期に歯並びを気にするという発想がなかなか出てこないのは自然なことだと思います。でも、乳歯列期(乳歯だけが生えている時期)は、実は顎の発育や歯並びの基礎が作られていく大切な時期です。
この時期に気になるサインを早めにキャッチしておくことで、将来の歯並びへの影響を小さくできる可能性があります。「異常かどうか」の判断は専門家に任せるとして、今回は「こんなことが気になったら一度確認してみて」というサインを親御さんにわかりやすくお伝えします。
まず、乳歯列期の「標準的な歯並び」について少しお話しします。これを知っておくと、何が気になるサインなのかが判断しやすくなります。
乳歯は上下合わせて20本。2歳半〜3歳ごろに生え揃うことが多いです。乳歯が生え揃ったお口の中の標準的な状態として、よく知られているのが「歯と歯の間にすき間がある」ことです。乳歯の歯並びはすき間があるのが自然な状態で、特に前歯のあたりに見られる「霊長空隙(れいちょうくうげき)」と呼ばれるすき間は、将来より大きな永久歯が生えてくるためのスペースとして機能しています。
ですから、乳歯の段階で「歯と歯の間にすき間がある」と気になる親御さんもいるかもしれませんが、これは多くの場合、問題のないサインです。むしろ、乳歯がぴったりくっついてすき間がない状態の方が、将来永久歯が生えるスペースが足りなくなる可能性があります。
「乳歯できれいに並んでいるから安心」ではなく、「乳歯の間に適度なすき間があるかどうか」という視点で見てみてください。

乳歯列期に特に気にしてほしいサインのひとつが「受け口」です。
受け口とは、噛み合わせたときに下の前歯が上の前歯より前に出ている状態のことです。専門的には「反対咬合(はんたいこうごう)」や「下顎前突(かがくぜんとつ)」とも呼ばれます。
受け口は乳歯列期のうちに気づいていただきやすい歯並びの問題のひとつです。「なんとなく顎が出ている気がする」「前歯の噛み合わせが逆になっている」と気づいて来院される親御さんも多いです。
受け口の原因はさまざまで、骨格的な要因が大きい場合もあれば、舌の癖や下顎を前に突き出す癖が影響している場合もあります。原因によって対処法も変わってくるため、まずは歯科医師に現状を確認してもらうことが大切です。
乳歯列期の受け口は、成長に伴って自然に改善するケースもゼロではありませんが、そのまま永久歯列期まで続くことも多く、早い段階で状態を把握しておくことが将来の対応をスムーズにします。「もしかして受け口かな?」と感じたら、一度確認してみることをおすすめします。
前から見たときに、奥歯は噛み合っているのに前歯だけが噛み合わず、上下の間に隙間が開いている状態を「開咬(かいこう)」と呼びます。
開咬になると、前歯で食べ物を噛み切ることが難しくなります。リンゴをかじる、サンドイッチを前歯で噛み切るといった動作がしにくい場合、開咬の可能性があるかもしれません。
乳歯列期に開咬が見られる原因として多いのが、指しゃぶりや、口の中に物を入れる癖です。指を前歯の間に入れる形で指しゃぶりをしていると、その部分の歯が押し広げられて開咬につながることがあります。また、おしゃぶりの長期使用も関係することがあると言われています。
口呼吸が習慣になっているお子さんも、口がぽかんと開きやすく、それが歯並びに影響することがあります。「いつも口が開いている」「口を閉じていられない」という状態も、サインのひとつとして頭の片隅に置いておいていただければと思います。
ただ、指しゃぶりは3歳ごろまでの発達段階でよく見られる行為でもあります。「3歳までは様子を見る、それ以降も続くようなら相談する」というくらいの感覚で捉えていただけると、過度に心配しすぎなくて済むと思います。

「なんとなく顔が左右非対称な気がする」「噛むときにいつも同じ側ばかりを使っている」こうした気づきも、実は歯並びや咬み合わせに関係していることがあります。
顎の骨は成長の途中にあり、日常的にかかる力の影響を受けやすい状態です。片側だけで噛む癖(偏咀嚼=へんそしゃく)が続くと、顎の発達に左右差が生じる可能性があります。また、頬杖をつく癖やうつぶせ寝の習慣が、顎のゆがみに影響することがあると言われています。
食事中の様子を少し観察してみてください。左右均等に噛んでいるか、食べこぼしが多くないか、よく噛まずに飲み込んでいないかといったことが、顎の使い方や咬み合わせのヒントになることがあります。
あごのゆがみや咬み合わせのズレは、この時期に気づけると成長を利用したアプローチができる可能性があります。「なんとなく気になるな」という段階でも、専門家に相談してみることで「今は様子を見て大丈夫」「少し早めに対応しましょう」という判断をしてもらえます。不安を抱えたまま様子を見続けるより、確認してみる方が親御さんも気持ちが楽になると思いますよ。
最後に、少し視点を変えたお話をさせてください。
この記事を読んで「うちの子に当てはまるかも」と感じた方もいるかもしれません。でも、ひとつ知っておいていただきたいのは、乳歯列期のお口の状態は成長とともに変化するということです。今気になることが永久歯に生え変わるときに自然に解消されることもありますし、逆に今は目立たなかったことが後から問題になるケースもあります。
つまり、「今の状態だけで将来を判断する」ことは難しく、定期的に専門家の目でチェックしてもらうことが一番確実です。
歯並びに関する相談は、「明らかにおかしい」と思ってから行くよりも、「ちょっと気になるな」という段階で行く方が、対応の選択肢が広がることがあります。早めに現状を把握しておくことで、「今は様子見でいい」という安心感を得ることもできますし、「この時期にできることがある」という情報を知ることもできます。
「何かあったら行く」ではなく「気になったら確認しに行く」というスタンスが、お子さんの歯並びを守る上でとても大切だと思っています。
「うちの子の歯並び、一度見てもらいたい」「受け口っぽいけど大丈夫なのかな」「指しゃぶりがまだ続いているんだけど」そんなことが頭にあったら、ぜひお気軽にご来院ください。
足利市福居町のむらかみ歯科・矯正歯科では、乳歯列期のお子さんの歯並びや咬み合わせのご相談も承っています。「治療が必要かどうかまだわからない」「話だけ聞きたい」という段階でも、もちろん大歓迎です。お子さんの今の状態をわかりやすくお伝えしながら、一緒に考えていきましょう。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の症状や治療については、歯科医師へのご相談をおすすめします
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栃木県足利市福居町の歯医者「むらかみ歯科・矯正歯科」院長の村上智保です。
小児歯科・こどもの矯正を中心に、子どもから大人まで通いやすい歯科医院を目指しています。
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