2026年7月18日

「もう4歳になるのに、まだ指しゃぶりが続いていて…そろそろやめさせた方がいいのかな」
「うちの子、いつも舌が前に出ているんだけど、歯並びに関係あるの?」
こういった心配をしながらも、「どこまで気にすべきかわからない」と感じている親御さん、多いと思います。
指しゃぶりも舌を出す癖も、小さな子どもにはよく見られる行動です。だからこそ「よくあること」として見過ごしがちですが、長期間続くことで歯並びに影響が出てくる場合があります。とはいえ、焦って無理にやめさせようとすることが逆効果になることもあります。
今回は、指しゃぶりや舌の癖が歯並びにどんな影響を与えるのか、そしてどのように向き合えばいいのかを、年齢ごとの考え方とあわせてお伝えします。

まず、指しゃぶりについてです。
指しゃぶりは、赤ちゃんが生まれながらに持っている哺乳反射に関連した行動で、生後すぐから見られます。精神的な安らぎや感覚の刺激として機能しており、2〜3歳ごろまでの指しゃぶりは、発達の自然な一部として捉えられることがほとんどです。
この時期に「やめさせなければ」と過度に心配する必要はありません。多くの場合、成長とともに自然に頻度が減っていきます。
問題になってくるのは、4歳以降も指しゃぶりが続いているケースです。この頃になると永久歯の歯胚(歯の芽)がしっかり形成されており、指しゃぶりによる持続的な力が歯並びや顎の発育に影響を与えやすくなります。
特に5〜6歳を過ぎても日常的に指しゃぶりをしている場合は、歯科医師に相談してみることをおすすめします。「まだやっていても大丈夫か」「今の歯並びへの影響はどの程度か」を確認してもらうことで、対処の判断がしやすくなります。
指しゃぶりによって歯並びに影響が出る場合、どのような変化が起きやすいのでしょうか。
最もよく見られるのが「開咬(かいこう)」と呼ばれる状態です。奥歯は噛み合っているのに、前歯が噛み合わず上下に隙間が開いてしまっている状態のことです。指を口の中に入れ続けることで、前歯が押し広げられた状態が続き、自然な噛み合わせが形成されにくくなります。
あわせて起こりやすいのが「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」、いわゆる出っ歯です。指で上の前歯を継続的に前方に押し続けることで、上の前歯が前方に傾いてくることがあります。
また、上顎のアーチ(歯が並ぶU字型の形)が狭くなる「狭窄歯列弓(きょうさくしれつきゅう)」が起きることもあります。指が口の中で上顎を圧迫することで、上顎が横方向に十分に広がりにくくなると考えられています。
これらの変化は、指しゃぶりをやめた後、成長の力によってある程度自然に改善することがあります。ただ、やめた年齢や期間、指しゃぶりの強さによって回復の程度は異なりますので、「やめれば必ず元に戻る」とは言い切れません。早めに気づいて対応することに、やはり意味があります。
指しゃぶりと同様に気をつけてほしいのが、舌の癖(舌癖=ぜつへき)です。
「舌癖」とは、飲み込むときや安静にしているときに、舌が正しくない位置にある状態が習慣化していることを指します。具体的には、飲み込む際に舌を前歯の裏側や上下の歯の間に押し出す動作(異常嚥下癖=いじょうえんげへき)、リラックスしているときに舌先が前歯の裏ではなく前方に位置している状態などが代表的です。
私たちは1日に何百〜何千回も無意識に唾液を飲み込んでいます。そのたびに舌が前歯に向かって力を加え続けることで、前歯が少しずつ前方に傾いたり、上下の前歯の間に隙間が生じたりすることがあります。これが先ほどお話しした開咬や出っ歯の原因のひとつにもなります。
舌癖は外からは気づきにくく、親御さんが見ていても「よく舌が出ているな」くらいにしか思わないことが多いです。ただ、「話すときに舌が前歯の間からよく見える」「食べるときに舌が出ている」という様子が気になったら、歯科医師に確認してもらうと良いかもしれません。

「すぐにやめさせなければ」という気持ちになるのは親御さんとして自然なことですが、指しゃぶりや舌癖を力ずくでやめさせようとすることは、かえって逆効果になることがあります。
これらの癖の多くは、不安やストレス、退屈など心理的な要因と結びついていることがあります。環境の変化(引越し・入園・新学期など)や、甘えたい気持ちが満たされていないときに癖が強くなることも少なくありません。強く叱ったり、指に辛いものを塗ったりといった強制的な方法は、かえってストレスを増やし、癖を強化してしまうことがあるため、あまりおすすめできません。
大切なのは、お子さんが安心できる環境を整えながら、癖の頻度を少しずつ減らしていくことです。「気づいたら穏やかに声をかける」「癖が出やすい場面(眠いとき・手持ち無沙汰なとき)を観察して、その状況を変える工夫をする」といった、生活の中での小さな働きかけが、長い目で見ると効果的です。
舌癖については、口腔筋機能療法(MFT=Myofunctional Therapy)と呼ばれる舌や口周りの筋肉のトレーニングを取り入れることもあります。舌の正しい位置や動かし方を練習することで、舌癖の改善を目指すアプローチです。矯正治療と並行して行われることもあり、歯並びの改善効果をより持続させる助けになると考えられています。
「4歳を過ぎても指しゃぶりが続いている」「舌が出ていることが多い気がする」と感じていても、「すぐに何かしなければ」と焦る必要はありません。ただ、「今の歯並びへの影響はどの程度か」「このまま様子を見ていいか」を専門家に確認してもらうことで、漠然とした不安が具体的な見通しに変わります。
歯科医院では、現在の歯並びの状態をレントゲンも含めて確認した上で、「今は経過観察で大丈夫」「そろそろ癖への対応を考えましょう」「歯並びへの影響が出始めているので相談しましょう」といった判断をお伝えできます。
癖があること自体を責める必要はまったくありません。大切なのは、現状を把握した上で、お子さんに合ったペースで対応を考えていくことです。
「指しゃぶりがなかなかやめられない」「舌の癖があるかもしれない」「歯並びへの影響が心配」という方は、どうぞお気軽にご来院ください。
足利市福居町のむらかみ歯科・矯正歯科では、こうした癖と歯並びに関するご相談にも対応しています。「治療が必要かどうかまだわからない」「まず話だけ聞いてみたい」という来院でも、もちろん大歓迎です。お子さんのお口の状態を一緒に確認しながら、無理のない対応策を考えていきましょう。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の症状や治療については、歯科医師へのご相談をおすすめします。
栃木県足利市福居町の歯医者「むらかみ歯科・矯正歯科」院長の村上智保です。
小児歯科・こどもの矯正を中心に、子どもから大人まで通いやすい歯科医院を目指しています。
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